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再告知 「武田百合子『富士日記』について知っていること、あれこれ」水本アキラさんトークイベント 於:ひばりブックス

台風の停電のなか日向に椅子を出して「武田百合子富士日記』の4426日」1巻を読み終わる。

たくさんのことを考えさせられる。それは1巻を終わって「富士日記」上巻さえもまだ終わらない丁寧・詳細さでこの作品を解体し武田百合子さんの体験・表現を再構成してくれるからだ。

だけど水本さんは過剰に百合子さんの内面に立ち入ることはしない。「富士日記」の登場人物たちのことはもちろん、当時の生活様式や日本人の意識や世相の出来事など、百合子さんの外側に起きていることたちを取材しながら彼女を浮かび上がらせ「富士日記」の世界を再構成する。とても丁寧で、かつまた読みやすい。きっと水本さんがこれまで幾多の雑誌編集で培ってきたものなんではないだろうか。

 

放っておけばゴミにしかならないものが、貴重なエネルギーに変わる循環性こそ素晴らしいのだ。『富士日記』もそんな循環性をもった書物である。一日が終われば忘れ去られていくだけの何気ない出来事が、優れた書き手が綴りなおすことで、立派な文学作品になって世に残された。そして、無数の読者の心を温める新たな燃料へと姿を変えたのだ。

 

作品に登場する「オガライト」というおがくずを加工して暖炉などに点火するのに使うモノを説明した後の文章だけれど、ほんとにそうだと思う。ぶっきらぼうな筆致、感情にすぐに流されてしまう落ち着きのなさなどおよそ冷静に組み立てられ構成された文学作品とはいいがたいこの作品がどうしてここまでたくさんの読者に読み継がれてきたのか?

先日この会の告知をしたら、以前ご本をお引き取りさせていただいた年長のご婦人から連絡。「今静岡にいないので行けない。『富士日記』はとても好き。気持ちが低いときにはいつもこれを読んできたのよ」という強いご連絡をいただいた。文字通り燃料だ。

 

1巻は富士のすそ野、武田家別荘の近くに大岡昇平が越してきたころで終わる。

2巻を読むのが楽しみ。

ぜひ皆さんにも水本さんのお話を聞いていただきもう一回、また初めてでも「富士日記」の世界を感じていただければと思います。

ぜひ会にご参加くださるべくご連絡をお待ちしております。

水曜文庫・店長

 

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