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「古本海岸 おんちみどり作品集」(北冬書房)が入荷しました

「ガロ(現アックス)」よりももう少し奥に踏み入ったような、つげ義春よりもつげ忠男みたいな(雑駁な説明で失礼します!)雑誌「幻燈」や「夜行」といった場所で漫画を描かれてきたおんちみどりさん(知人の知人でアングラ劇団発見の会の芝居を観に行くとお会いしたりしてました)より「古本海岸 おんちみどり作品集」(北冬書房)という古本屋で売らなきゃどこで売るというような本が届きました。1500円です。

毎晩みる「夢」がおおきなモチーフになっているように思います。シュールなのにどこか懐かしいような作品が集められています。
つげ義春研究会に所属されていることや、知る人ぞ知る久住昌之さんの「タキモトの世界」の滝本淳助さんへの再評価ですとか、そうした「知っていること」から類推もするけど、「夢はおもしろい!」という率直なゆるぎない衝動があふれている。夢をどのように作品として構築をしてるのかとか、脚色はあるのだろうかなどと聞いてみたいことはいろいろありますが、こういう本はワタシなんかの説明を受けて読むのではなくて、おのおのがちょこっとでも読んでみないとダメな気がします。ただ店頭での立ち読みでも不十分かもしれません。いつも寝床の近くに置いてあって、長い年月が過ぎふと手に取って読むとああ面白いとなる、いや一回目はなんとなく合わなくって三度目くらいに読み始めるとじわじわきてもうどうしても手放せないとかそのような本のような気が強くします。常に枕元に置いとかないと、ほんとです。貴重な本です。ぜひ買いに来てください。

水曜文庫の向かい、駿府町側に以前小さな新刊書店があって、学生の頃ガロや青林堂のまんがを買いによく行きました。というか当時はもちろんアマゾンなどなくて静岡ではそこに行かなければ見ることもできないのだから、でもお金もないし、永島慎二の作品集をただ見上げてたのをよく覚えています。もっぱら小学館文庫のまんがばかりを買ってたのかもしれない。そこにはたまに北冬書房の本なども並んでいて、いやもう静岡を離れてからどこかの本屋で見たのかもですが、とにかく若い当時の自分の心性に北の冬という名前がつよーく突き刺さりました。
北冬書房を主宰されていた高野慎三さんは、つげ義春さんの温泉旅シリーズまんがを文章化したような、またさらに民俗学的テイストも加味した「宿場行」や骨董の本なども出されていて、読み憧れ学生の頃鉱泉や峠を求めて一人旅をしたことも思い出します。ものすごく寂しかった。

また北冬書房や「幻燈」といった文化はアナキズムとも親和性が高く、以前静岡で上映をした大杉栄以降のアナキストたちの青春群像劇「シュトルム・ウント・ドランク」の制作に北冬書房さんは関わられていて一度電話でお話をさせていただいたし、また今本棚にある「獄窓から」という、大杉一派のなかでもことにファンが多い和田久太郎の本の版元は幻燈社となっています。
北冬書房の本を扱えるのはとてもうれしいです。
よろしくお願いいたします。

「古本海岸 おんちみどり作品集」を買っていただいたお客さまにはもれなく「階段町かるた」はがきをお付けしております!