水曜文庫の日記 Tel:054-689-4455

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詩のおくりもの

無秩序な古書店の蟹
無秩序な古書店の棚は
どこに宝がひそんでいるかわからない
視線を上下左右に動かすうちに
私は蟹になっていく

先程から横に歩きはじめているし
泡のような独り言さえつぶやいている
奥まった場所の店主は ことによると山椒魚
お互いの素性を見抜かれぬよう
無口にこしたことはない

行き届いた分類と見事な体系をもつ
秩序ある明るい書店ならば
私は翡翠にもなれたろう
目指す一角に狙いをつけて
迷わず獲物を手に入れただろうに

そう言えば渓流のような表の通りを
人々はきらめきながら流れていく
私はと言えば穴倉のような書架の間で
息を押し殺し 少し頬を上気させ
光を放ち始めた一冊を抜き出そうと
二本の指をそっと構える



今日お客さまに教えていただいた詩。
「あそぶこどもたち」(山田一子 あざみ書房)という本のなかに入っている一篇をコピーしていただきました。わたしに詩をどうこういう素養はありませんが、しかしなんとも言葉づかいの好きな詩です。素っ気ない感じがまたよい。
しかしこうして古本屋のブログに載せるという行為は、詩を自己宣伝に援用するようなあざとさをも皆さんは感じていられるでしょうか?
はたしてそう思われるよりも、詩を共有したいというただ一念から載せさせていただきました。
この詩を読んで、一昨日終わった古本市で腰と肩をやられてひーひーしていますが、少し生き返った心地がします。さわやかな風が骨盤のあたりを吹き抜けました。

この場をお借りして、古本市「探書会」をやらせていただいた鈴木邸の皆さまに御礼申し上げます。ありがとうございました。