水曜文庫の日記 Tel:054-689-4455

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「ひとを排除しない社会へ トランス・フォビアをめぐって」

 

お話:笹沼弘志(憲法学/ホームレス支援)    

8月18日(金)18;00より 水曜文庫にて  要予約・10名  参加費500円

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 本屋の棚に「ある性転換者の記録」(虎井まさ衛/宇佐美恵子 青弓社)「トランスジェンダリズム 性別の彼岸」(松尾寿子 世織書院)の2冊があったので読んでいる。ともに1997年、今の世論とはだいぶん違う時代の本。2冊目の本が「トランスジェンダリズム」と書いてあるのは、現在巷間で言われるようなトランスジェンダーという存在を手放しで擁護する人たちの総称という意味、つまり「間違った悪い思想」として使われる「トランスジェンダリズム」という意味ではなく、文字通りトランスジェンダーと呼ばれるようになった人たちの持つ「思想」という意味で使われている。近代になって1997年の20年前、1970年代からトランスジェンダーへの差別をやめ他の人たちと同じような生活を送れるような土壌を作ろうという当事者たちから始まりその支援者たちにも広がった運動があったということを知った。ほとんど知らなかった。

 

 上の300字のなかでさえ「?」という個所があるのではないだろうか。

 トランスジェンダーという人たちが人口の1パーセント未満いて、彼らの生活や権利について今まで彼らを「そんな人たちはいない」としてきた社会が上の本から20年以上たって、「彼らはいる」と認識を改めるところまできた。その上でさまざまな社会通念や生活様式やその先の法整備を当然していかなくちゃならない。もちろんトランスジェンダーの人たちのうちには「ほっといてくれ」と思う人たちもいるのかもしれないけれど、社会はほっといてくれない。

 「?」と思うのではないかというのは、なぜ彼らの存在を社会のなかに明記して、人権を回復し暮らしやすくするという行為が「間違った思想」とつながるのかというところだ。

 

トランスジェンダーという存在を認めジェンダーを女・男という二項以上にすること    を不満、間違いだと思う人たちがいる。性自認に基づく性転換を狭義にとらえ、勝手に第三のジェンダーを選ぶ自由はないという考え方。

トランスジェンダーのなかの女性として暮らす人たちが、女性たちのテリトリーのなかに入ってくることを怖いと思う人たちがいる。実生活のなかでも、また女性という存在のこれまでの時間や思想に彼女らが浸食してくることに対して「嫌だ」と思う人たちがいる。つまり、①の女性カテゴリーのなかにトランスジェンダー女性が入ることが嫌なひと、躊躇する人たちもいるということとぼくにはみえる。

トランスジェンダーの人たちを広く社会に受け入れようとする潮流がアメリカ・民主党政権の意向を汲んでいて、日本社会はそれを疑問視せずに、考えることなく受け入れようとしているのではないかという考え方。

トランスジェンダーの人たちの人権を回復し差別を無くし社会に受け入れていくという運動が、それを疑問視する考え方を排除しているのではないか。例えば雑誌への論文の掲載、出版を差し止めるようなキャンセル・カルチャーを差別反対運動が生み出しているのではないかという考え方。

⑤当事者と非当事者がいて、非当事者が当事者のこともわからないのに、感情だけでこの差別反対運動を擁護して盛り上げているのではないかという疑念。

 もっとたくさんあるのかもしれないけれど、上のような考え方が「LGBT差別解消法」を「理解増進法」と運動をしている人たちに言わせれば骨抜きの名称へと変化させた理由なのでないかと思う。

 

 50歳代後半、生活の上では保守的な暮らしをしてきたぼく自身、性自認ということを生活のなかで得心することができているのかいないのか。それほどまでに自分のセクシャリティということに無自覚で生きて来たし、女性という存在にも無自覚で生きてきた。きっと今までじっとりやらしい目で女性を見たりして嫌な思いもさせて来ただろうと思う。いやいやさまざまに迷惑をかけて来ただろうと思う。そのワタシが女性のテリトリーに口をはさむことがどうしてできるものだろうか。自分のごくごく私的な経験や知見と、今トランスジェンダーという人たちがいることとがうまくかみ合わないということは、ぼくにもわかる。

 しかし①から③はどこかフォビアに引きずられているようにぼくには見える。その正体のわからない他者が普通に付き合える隣人であるのならば起こらない論ではないのだろうか。そんなことを思っていたときに、ツイッターで笹沼弘志さんが差別反対運動に掉さす発言をしている人たちと盛んに討論・議論されているのを知った。根性がないのですぐにやめてしまったけれど、笹沼さんたちが活動されているホームレスの支援グループに少しだけ参加したことがあるので、見知っていた笹沼さんが、差別反対の立場からほんとうに丁寧に、丁寧にすぎるほど発言をされている。それなら、一度そのことについてお話をしていただけないかと、そのツイッターにしたってほんとにお疲れのことだろうに、お願いのご連絡をしてしまった。

 

 いちばん上の本二冊に先立って新刊「埋没した世界 トランスジェンダーふたりの往復書簡」(明石書店)という本を読んだ。とてもとても面白かった。もちろんそれは本のなかのことで、「かみ合わない」自分が一冊読んだからといってかみ合うはずもない。わからないことだらけだ。しかし面白い。魂を持っていかれるほどに面白いのだから、もしかしてこれは何かの宗教であるとか、人心を乱す詐術であるやもしれないと思うほどだ。しかしそうなっていないのは、生物学上・社会通念上の性別に違和を感じそれを持ち続けた彼・彼女らのほんとうの苦しみの強度が書簡のなかに宿っているから。

 この本のなかでも言われているように、トランスジェンダーというカテゴリー一つをとってみても千差万別、一人一人にその在り方が違い、あたりまえにわかろうとすればするほどわからなくなってゆく。

 

 8月18日の会では笹沼弘志さんにどうしたら社会のなかで彼・彼女らとともに暮らしていくことができるかというお話をしていただく。当事者が話すのではありません(もちろんご参加いただけるのであればそんなにうれしいことはありません)。笹沼さんは法学の先生であり、また長く静岡の街中を歩きながらホームレスの人たちの支援をされてきた方。学者で路上の人というのはこの町にはなかなかいない傑物だ。音楽もお好きでSNSなどで新しい音楽を教えていただくこともよくある。最初に「当事者ではなく」と書きましたが、ぼくよりもその当事者性の幅を広く持っている笹沼さんの思想と実践はやはりとてもオルタナティブであると思う。トランス・フォビアをもととする差別をいかになくしていこうということはもちろん、これまで、また現在笹沼さんが考えられていることなどもお話していただけたらよいなあと思っています。(市原健太)

 

笹沼弘志

1961年生まれ 静岡大学教育学部教授(憲法学)「野宿者のための静岡パトロール」事務局長としてホームレスと野宿者・生活困窮者の支援に取り組む

著書「ホームレスと自立/排除 路上に<幸福を夢見る権利>はあるのか」(大月書店 2008年) 「臨床憲法学」(日本評論社 2014年)

 「ひとを排除しない社会へ トランス・フォビアをめぐって」

           お話笹沼弘志(憲法学/ホームレス支援)

 

8月18日(金)18;00より 水曜文庫にて

要予約・10名

                 参加費500円

(054‐689‐4455/suiyou-bunko@lily.ocn.ne.jpまで)

 

  LGBT差別禁止法案が「理解増進法」として成立するなか、マジョリティの側からフォビアを背景にしたトランスジェンダーの方たちへの偏見による一方的な決めつけやヘイト、そして排除へと続くような声が沸き上がっています。ぼくらはトランスジェンダーの方たちのことをほとんど知らない。しかし人を排除しようとする社会は窮屈で息が詰まります。

  この間SNSなどで排除へとつながるさまざまな声と根気強く対話をし続けている笹沼弘志さん。大学で憲法学を教える立場、また長年静岡市の街中や公園を歩きながらホームレスの方たちと対話をしながら支援をされてきた立場から、今現在おこってること、そしてどうしたら「仲間」としてともに暮らすような社会を作ることができるか、そのようなことをお話していただこうと思っています。堅苦しい講義というのではなく、いっしょにお話ができるような会にしたいと笹沼さんとも話しています。金曜日の18時よりという開始時刻ですが、何卒お時間あわせてぜひご参加をお待ちしております。

 

笹沼弘志

1961年生まれ 静岡大学教育学部教授(憲法学)「野宿者のための静岡パトロール」事務局長としてホームレスと野宿者・生活困窮者の支援に取り組む

著書「ホームレスと自立/排除 路上に<幸福を夢見る権利>はあるのか」(大月書店 2008年) 「臨床憲法学」(日本評論社 2014年)

 

水曜文庫 

静岡市鷹匠2‐1‐7 tel054-689-4455 mail:suiyou-bunko@lily.ocn.ne.jp

純粋読書会 5月9日(火曜)18時半より 

前回5月9日の様子です


島根に「句読点」さんという新刊・古本を売る若い店主さんのお店があります。そのお店に通っていた現在静岡で暮らされている方にお話をうかがいました。

句読点さんで「純粋読書会」という会がある。店をはじめてからめっきり読書量の減ってしまった店主さんが、無理にでも読書時間を捻出するために作った会。一時間半黙って読書してその後ちょっとだけ参加者でお話をする、それだけの会なんだ。なんだか面白いよね、というお話。それをうかがって「ほんとにそうだな」と思うことしきり。家賃を払って胸をなでおろした3日間くらいが現在のワタシの読書時間。あとは日がな机に座っているとしてもなかなか読書ができなくて悲しい。

 

句読点さんにもご了解をいただき、水曜文庫でもやることにしました、純粋読書会。

とりあえず連休の終わった5月9日。

その後の予定はこれから決めることにして、とりあえずやってみることに。

 

その日、ワタシは夕方6時ころから店で本を読んでます。

もしご参加の方がいらっしゃいましたら、気兼ねなく当日までにご連絡下さればうれしいです。なんとかコーヒーくらいは入れようと思います。その日は島根の句読点さんとも画面をつなげさせていただき、あちらでどんな様子で会を行っているのか、ちょっとお話を聞くということもします。

 

「ワイと共鳴せえへんか」というのは織田作/町田康さんのセリフですが、「ワイと読書せえへんか」といったら皆さん引いてしまうでしょうか。もうただただ本を読んで、その後「なんの本読んでたの?」というくらいの会ですので、どうぞ皆さまご参加お待ちしております。一人はさみしいです。

 

純粋読書会

五月九日(火曜)18時半より二時間程度

参加費無料

ご参加いただける方は当日までにご連絡ください。

tel054-689-4455

suiyou-bunko@lily.ocn.ne.jp

 

詩 うたをひらく 春の水辺編

詩を書かれている原田淳子さん、野上麻衣さんが水曜文庫に来てくれて自作の詩を読んでくれます。書いてそれを声に出してそとへほうり出してみることでどんなことがおこるのか。
詩を書かれている方、これから書こうと思ってる方、ぜひご参加お待ちしております。どうぞよろしくお願いいたします。

ご参加申し込みは
info@haradakikaku.com
までお願いいたします。

 

原田淳子Junko Harada 
漫画家、 画家、 司書I毎月19日に浜風文庫に詩を掲載しています。 画・詩集『夢の塚』2021年刊行(原田企画)
野上麻衣MaiNogam 
声•ことば・絵•あそびI対話を通してのものづくリ、場づくリをしています。詩集に『渚にて』(2017)『9番目の雲』(2022)。

 

 

『対抗言論』Vol.3 刊行記念おしゃべり会 4月2日(日)16時より 水曜文庫にて 会費500円

『対抗言論』(法政大学出版局)という雑誌の3号が今年一月に発売になりました。「差別と暴力の批評」というとおり、昨今のヘイト、差別と暴力に抗するさまざまな論考の載る批評誌です。

 

この雑誌の編集にかかわっている批評家の川口好美さんは川根本町〝てんでんこ〟というブックカフェも運営されていて、以前からなにかいっしょにできることはないかとお話をしていました。そのうち川口さんが編集に加わられてこの雑誌が完成をしたので、やはりいっしょに雑誌を作られていて、またこれまでたくさんの本を出されている批評家の杉田俊介さんといっしょに水曜文庫でお話をしていただく機会を得ることができました。

お二人を囲んで、雑誌作りについて、批評と差別、批評と社会のかかわりなついてなど、さまざまなお話をしていただこうと思っております。もちろんおしゃべり会とのことですので、ご参加者のご意見なども持ってきていただければと思います。

 

当日書籍(「対抗言論」、杉田俊介さんのご本)の販売もいたします。一人でも多くの方に読んでいただければうれしいです。

 

狭い会場ですのでご参加は15名まで、ご予約は水曜文庫までご連絡をください。

また「対抗言論Vol.3」は近隣の新刊本屋さん「ひばりブックス」に在庫がありますので、会までにご自分の興味ある論考など読んでいただければ楽しい会になるのではないでしょうか。ぜひご参加をお待ちしております。

どうぞよろしくお願いいたします。

 

杉田俊介:1975年神奈川生。批評家。著書に、『宮崎駿論』、『ジャパニメーションの                       成熟と喪失』、『橋川文三とその浪漫』『神と革命の文芸批評』ほか。

川口好美:1987年大阪生。川根本町在住。文芸批評。「不幸と共存――シモーヌ・ヴェイユ試論」で群像新人評論賞受賞。今夏、初の単著となる『不幸と共存――川口好美批評集Ⅰ』を刊行予定。

 

水曜文庫 054-689-4455 suiyou-bunko@lily.ocn.ne.jp 

 

一月二日 本日から営業をしております

昨年、ご本をお引き取りさせていただいたお客さま、店に立ち寄っていただいたお客さま、店のイベントでお世話になった方々、誠にありがとうございました。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 

明日三日、午前中一件お引き取りに出るため開店がお昼頃になってしまうと思います。なるべく早く開けることのできるよう作業します。