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次回、映画☆おにいさんのシネマカフェvol.21

来2月25日(土)18:00より
映画☆おにいさんのシネマカフェvol.21「マノエル・ド・オリヴェイラ」を行います。今回は一本の映画を丸々観てそのあとお話の会をします。皆さまどうぞこぞってご参加ください。参加費800円、だいたい3時間と少しの予定です。

詳細は映画☆おにいさんの以下ブログにて
http://gogolatalante.hatenablog.com/entry/2017/01/16/182607

昨年は6回、およそ二か月に一度おにいさんに来ていただいて会をしました。その内でこころに残ったもの二本書きとめておきたいと思います。
『車夫遊侠伝 喧嘩辰』(加藤泰、日本、1964)
なんといっても内田良平の顔が印象に残りました。新参の車夫がやくざの親分のおきゃんな娘を車に乗せて走るうちに口げんかになってろくな理由もないまま橋の上から川へ娘を放り投げてしまう。子分たちにとっつかまって親分とたくさんの子分、そして娘のいる前に引き出されて「どういう料簡なんだ」と問い詰められる場面が長い長いワンカットのシーンになっています。車夫はそこにいるやくざ者たちなどよりもてんで社会性がなく頑なに描かれていて、謝るでもなくあたりかまわず毒づく車夫に親分も呆れてしまうような状態。その内車夫は、話しているうちに娘をちら見し始めて、自分が川へ投げ込んだはずの娘を見染めてしまい親分に結婚させてくれと訳の分からないことを言い始める。娘もさっきまであれほど悪罵を尽くした相手にホの字になるのですが、ただ瞬間瞬間のみを生きているだけでしっかり語られるような理由など微塵もなく、それでも真剣に娘を思っていることを「顔」で伝える内田の演技にはぞくぞくしました。映画でなくちゃできない表現のように思えました。

『奇跡』(カール・テホ・ドライヤー)
北欧の映画を、まずこんな機会でないとみることはなかったと思います。
奇跡の意味は「生き返り」を映画のなかでみせてくれるから。抜粋なので宗教上の差異はわからなかったけれど、オーソドクスなキリスト教とそうではない神とがあって、その後者の方が病気で亡くなった女性を生き返らせてしまうというストーリー。モノクロ画面だからこそできるような単色で静謐でスタイリッシュな構図、いっしょに映画を観た方が言っていましたがどのシーンを取って見ても一枚の絵・写真として通用するような考え抜かれた構図があってこそ、生き返りという荒唐無稽さを、「そういうこともあるのではないか」と観る人たちに思わせるリアリティになっていると思いました。ことさらにすごいことが起きたというのではなくて「そういうこともないわけではないのではないのではないか・・・」というような映画作者の態度、普通さ、投げやりさ、どうとでもとってくれというようなさりげなさも好ましくて、俳優たちもどこか大仰でなく普通っぽくて、生き返るというあるはずもない出来事が、いや人生わけのわからいことはあるのだからそういうことがあってもいいのではないかという目に見えるのとは違う位相へぼくらを連れていってくれるような面白さでした。考える観る自分ではなくて、映画の方に生と死をゆだねてしまえというか、なにかすごく自由さを感じました。