水曜文庫の日記 Tel:054-689-4455

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覚書

昨日、お客さまからご紹介をしていただき、浜松で二十年ほどミステリーのブッククラブを運営していた方のお話を聞くことができました。クリスティーなど7000冊の蔵書を並べたまるまる一室を開放して会報の発行、読書会、蔵書の貸し出しを行ってきたとのこと(全盛期には全国からの会員が200人)。第一回の鮎川哲也賞の批評部門に文章を載せたことをきっかけに開高健などさまざまな作家とのお付き合いや、ブッククラブで得た貸し出し状況の資料などを欲しがる出版社とのお付き合いなど、「読む」ということからさまざまに発展していく活動の楽しさよ。こういうことはよほどうまくやれてとんとん、パートで働いてなんとか運営を維持していくほかないのですが、それでもその方の話しぶりは苦労ではなく楽しさに満ちあふれたものでした。
またこの方のご主人はアングラ芝居、状況劇場黒テント、そして発見の会の世話人を務められていて、浜松にこの人あり、俳優・斉藤晴彦さんをして「この人には足を向けて寝られない」と言ったそうです。黒テントの全国巡業は、だから浜松から始まったこともあるのだそうです。芝居にかかわる人たちの宿泊や飯、公演の準備、チケットのとりまとめなどこういう仕事はほんとうに大変です。現在静岡には水族館劇場世話人をしている近藤さんがいらっしゃいますが、お仕事を見ていてほんとうにかっこいいです。
ご夫婦ともに無私の無名の協働性を発揮した素晴らしい半生をお聞きしました。横尾忠則さんの作ったシルクスクリーンの芝居のポスターなんか、みんなチケット買ってくれた人たちにお礼であげてしまったわよ。ぜんぜん残ってないの、とのこと。ああもったいない!と古本屋のワタシは思ってしまいました。