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昨日の会を終わって

ちょっと写真も撮れなかったのですが、昨日の会「ひとを排除しない社会へ トランス・フォビアをめぐって」、8人のご参加者で行いました。ご参加の皆さまありがとうございました。

まずは国際機関、各国、日本のこれまでのトランスジェンダーの人たちをめぐる歴史を振り返ること。それ以前の優生保護法、断種法等前近代的な思想・法体系と現在の「私の身体は私のもの」という基本的な福祉の考え方を形作ってきた歴史のなかで、それまで社会的に見えない存在であったトランスジェンダーの人たちの姿を浮かび上がらせた2003年の性別取扱い特例法、そして2023年の理解増進法へと続く概観ををみた。


笹沼弘志さんのお話は、このように段階的にでもさまざま困難を抱えながらでも進んできたトランスジェンダーの人たちの人権回復への進行が、この先のバックラッシュともいえる保守派の対抗によってとても困難になるであろうという見通しだった。

ちくま新書の「トランスジェンダー入門」がベストセラーになりという機運のなかでの笹沼さんの見通しは、やはり「フォビア」という感覚が「ともに暮らす」という思想よりもどうしても勝ってしまうという、長らくホームレスの人たちの支援をされてきた実体験にあるのではないかと思う。ぼくは見通しが甘い。

考えてみれば入管法だって、結局今は波風立てないようにやろうと思っているだろうけれど、基本的な国家の考え方は変わっていない。つまり入管施設自体の解体には至っていない。人を殺してしまうシステムなのにもかかわらず。それを全国民が知ってるにもかかわらず。

だけど長く続けている人、運動と思考をいっしょにしている人はぼくのように簡単に単純にゼツボーなどせず、しなやかに緩く運動を続けていく術を持っているように話を聞きました。疲れているだろうけれどめげていない。笹沼さんといっしょに活動を続けていて、またGID静岡という「トランスジェンダー」という言葉が一般化される前から性同一障害ということの支援にかかわっていた女性のお話もとても面白かったです。「当事者性」という繋がりを少しづつ広げていこうという運動論をさりげなく実践されている。かっこいい。80・90年代より云われたオルタナティブな実践を二十年続けた強度がここにはあると思える。
講義のあとは、質疑応答というよりビールを飲みながらの座談。楽しい会になりました。

また何かの機会に笹沼弘志さんにお話をしていただこうと、昨晩またしても手前勝手にお願いしてしまいました。もしご興味のある方などいらっしゃいましたら、教えてください。その折にはご案内をいたします。